フィラリアは犬猫の眼球にも寄生する?

タイトルをご覧になって、え!?フィラリアって心臓に寄生する虫じゃなかったの!?と驚かれた方もいるかと思います。実はフィラリアって、意外なところにも寄生するんです。

幼虫が眼球に迷い込むことで寄生します

まず、通常の犬糸状虫症の感染経路とライフサイクル(生活環)を見てみましょう。
すでにフィラリアに感染している犬の血を蚊が吸います。これにより、蚊の体内にミクロフィラリア(仔虫)が取り込まれ、脱皮を繰り返しながら、蚊の体内で成長していきます。成長した仔虫は再び蚊の吸血行為によって、フィラリア未感染の犬に届けられます。体内に侵入したフィラリアの仔虫は、まずは皮下組織や筋肉などで成長してから、血管に侵入して、心臓及び肺動脈に寄生していきます。これが通常型と呼ばれるフィラリアの寄生症状です。

ですがフィラリア症の症状にはこの通常型の他に、兆候もなく急死してしまう急性型、後肢の血管を塞ぎ後躯麻痺を引き起こす奇異性塞栓症、脳に入り込み運動麻痺を引き起こす幼虫迷入による症状などが知られており、タイトルにあります眼球への寄生は、幼虫が脳ではなく眼球に迷い込んでしまうことによって起きる症状として知られています。

フィラリアによって引き起こされる様々な症状を写した写真の中に、瞳孔の中央眼房水内にくっきりと黒い線が見えている写真がありました。この黒い線が虫体です。肉眼でもはっきりそれと分かるほど、目の真ん中に黒い線となって虫体が見えていました。眼球の中に迷い込んだフィラリアの仔虫は、こうして前眼房の中、角膜とレンズの間に入り込んでしまうのです。これは点眼液やホウ酸水などを使い洗い流そうとしても、取り除く事が出来ません。まれに、犬の目の中(眼科検診をする時に瞼を捲りますが、あの部分です)に虫を見つけることがありますが、これは角膜と結膜の間にいるもので、眼虫と言います。眼虫は点眼液やホウ酸水で洗い流す事ができる、表面にいる虫です。

なぜ眼球に寄生してしまうのか?

本来ならば心臓に寄生するはずのフィラリアが、眼球に侵入してしまうのは何故でしょう?これはまだ解明されていない症状の一つで、日本獣医臨床寄生虫学研究会会長の早崎峯夫先生の書かれた論文「面白い寄生虫の臨床(Ⅷ)寄生虫の小径、犬フィラリアの前眼房迷入」にも、どうしてこの様に仔虫が目の中に入り込んでしまうのか、その原因ははっきりとは分かっていないと記されています。とてもミステリアスな症状ですので、犬フィラリア症を知る上での一つのお話として聞いて、覚えておいて頂ければ幸いです。

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